東京高等裁判所 昭和42年(行ケ)67号 判決
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〔判決理由〕(本件審決の違法事由の有無)
二 原告は、本件審決は原告主張の点において判断を誤つた違法があるというけれども、その主張の採用できないことは、つぎのとおりである。
<書証>によれば、引用例の可変速伝導装置は、前記本件審決の認定するとおりの構造をもち、その歯車移動機構(シフター)は数個のサーボモーターの各両側より選択的に圧力流体を供給または排除することによつて作動するものであることが認められ、これを本件発明の可変速伝導装置と対比すると、両者は、本件発明における前記要旨(イ)のごとき構成を有する点でまつたく一致し、反面、本件発明が、共通動力源により常時歯車移動機構の全部を一方の係合位置に押し、この力に打ち勝つて各移動機構を他方の係合位置に選択的に移動させるようにした点で相違していることが明らかである。
ところで、一組の歯車対について、歯車対を常時可撓的に一方の係合位置に押し、この押圧力に打ち勝つような押圧力で歯車対を反対の係合位置に押すことにより、移動可能な歯車対を所望の係合位置に動かすことが、本件特許出願の優先権主張の日当時すでに周知の技術であつたことは、当事者間に争いのないところであるから、多段変速伝導装置において歯車対および歯車移動機構を複数組とした場合、右の周知技術を応用するにあたつて、複数個の歯車対および歯車移動機構の全部を常時可撓的に一方の歯車係合位置に押圧する共通の動力源を設けてこれらを一方に押圧しておき、この押圧力に打ち勝つて所要の歯車対および歯車移動機構を選択的に反対の係合位置に移動させるようにすることにより、装置の構造を簡易化するようなことは、当業者が格別の工夫を要せず容易に想到し得るところであり、それにより歯車移動の制御装置を簡略化し得るという原告主張の効果も、右のように可撓的動力源を共通にして装置を簡易化したことに伴う当然予想される効果の域を出ないものというべきである(なお、歯車移動機構の制御装置が回転式液圧切替機構よりなるものかどうかは、本件発明の要旨として特定されているわけではないから、前記可撓的動力源を共通にしたことにより、とくに液圧制御装置が簡略化される効果が大であるとしても、それは一実施例における効果にすぎない。また、動力作動装置として、ピストンの有効面積の差を利用する点も、本件発明の要旨とされているわけではない。)。したがつて、本件発明は、引用例および前記周知の技術から当業者が容易に発明し得るものというべきであり、この点の審決の判断に誤りはない。
(三宅正雄 杉山克彦 武居二郎)